「横浜バレエフェスティバル」が10年目を迎えます。2015年より2020年をのぞいて毎夏神奈川県民ホールで開催されているこの祭典を心待ちにされている方は少なくないでしょう。国内外で活躍するスターから次世代を担う新星までが集い、バレエの多種多様な魅力を一気に味あわせてくれます。
2024年8月4日(日)に行われる「横浜バレエフェスティバル2024」は、この10年の軌跡を振り返ることもできる得難い機会となりそうです。
ワールドプレミアムには、まさにワールドクラスのダンサーが集います。古典作品から現代の息吹を感じさせるコンテンポラリー作品までを存分に味わうことができるでしょう。
英国バレエ界からは、進取の精神に富む名門イングリッシュ・ナショナル・バレエの主軸として活躍する名花たちが、カンパニーからの共演者を連れて参加します。高橋絵里奈&ジェームズ・ストリーター「No Mans Land」よりパ・ド・ドゥ(振付:リアム・スカーレット)は、昨年大きな感動を呼んだ名編のアンコール。加瀬栞&エリック・ウルハウス「ダイアナとアクティオン」のグラン・パ・ド・ドゥではプロの技の凄さが見られそうです。
初回から数多く参加し、フェスティバルの顔の一人といえるビッグネームが小池ミモザです。現代最高峰の振付家ジャン=クリストフ・マイヨー率いるモナコ公国モンテカルロ・バレエ団のトップダンサーで、ダイナミックに魅せる表現力は格別。今年はネオクラシック作品(※タイトル未定)を踊る予定で期待が高まります。
元アクラム・カーン・カンパニーの髙瀬譜希子も常連です。英国ロイヤル・バレエ団常任振付家ウエイン・マクレガーや鬼才カーンのカンパニーに所属していましたが、著名ミュージシャンのPV出演のほか、さまざまな国際的なプロジェクトに振付・出演する異能。和太鼓奏者の佐藤健作とは2016年に遠藤の勧めで初共演し、以後コラボレーションを重ねています。2020年初演の「Mirror of Sarasvati」で両者の息の合った妙演を堪能しましょう。
北欧の名門であるスウェーデン王立バレエ団の芝本梨花子&三森健太朗は初出演ですが紛うことなき実力派で「海賊」よりグラン・パ・ド・ドゥを華やかに盛り上げてくれるはず。ベルリン国立バレエ団で来季のプリンシパル(最高位)昇格が決まっている佐々晴香は「グラン・パ・クラシック」よりヴァリエーションを優雅にして力強く踊るでしょう。
このところ国内バレエ団公演も活発です。ことに吉田都さんが芸術監督を務める新国立劇場バレエ団は人気・実力共にトップクラス。今回は同団の米沢唯&中家正博が「ジゼル」よりグラン・パ・ド・ドゥを踊ります。米沢の高度なテクニックに裏打ちされた深い表現力、中家の熟練の演技力とサポートによって、感動的な舞台が生まれるに違いありません。
初回からの常連の二山治雄と初出演の秋山瑛(東京バレエ団プリンシパル)が組む「ドン・キホーテ」よりグラン・パ・ド・ドゥは盛り上がること必至。しなやかで美しい踊りを持ち味とする二山と、今春、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞するなど最注目の新鋭バレリーナといっても過言ではない逸材の秋山が、大旋風を巻き起こします。
「横浜バレエフェスティバル」の名物といえるのが、柳本雅寛(ダンサー、振付家、+81主宰)による、一癖も二癖もあるユニークなコンテンポラリー作品。独特なセンスとあふれれるユーモアに触れると、誰もがその虜になるはず。今回は代表作「Lilly」より抜粋 Ver.2024をたずさえ、大宮大奨(ダンサー、振付家、映像作家)と共に登場します。
フレッシャーズガラも楽しみです。井関エレナ(チェコ国立ブルノ歌劇場バレエ)とジュンヌバレエYOKOHAMAが、遠藤の「チャイコフスキーの旅」よりパ・ド・ディスを披露。ジュンヌバレエYOKOHAMAは遠藤の「スーブニール・ドゥ・チャイコフスキー」も。また、斉藤佑衣奈(オーディション第1位)、岸琴音(オーディション第2位)、國立桃菜フローラ(YBCバレエコンクールGrand Prix 2024グランプリ)、四戸智紀(YBCバレエコンクールGrand Prix 2024準グランプリ)が、それぞれヴァリエーションを踊ります。
常連組とニューフェイスのバランスのよさが際立ちます。演目に関しても、鉄板の名作、再演を重ねて魅力を増している創作を中心に外れがない作品をセレクト。10年目を祝うにふさわしい、充実した一時を過ごせるでしょう。なお、会場となる神奈川県民ホールは2025年3月末をもって休館となります。名残惜しいですが、数々の名舞台を生んできたバレエ&オペラの殿堂に、あらためて感謝を捧げる機会ともなるでしょう。
ライター:舞踊評論家 高橋森彦